チンパンジーが打ち鳴らす警鐘(BBC、10月17日付)

ここ 20 年弱の間にその数が 90 %減少した。

     BBC October 17, 2008
     African chimps decline 'alarming'

「保護を真剣に考えるのなら、保護し、それを持続させるための投資が必要だ」
——クリストフ・ボッシュ教授(マックス・プランク進化人類学研究所)


このたびの研究発表によれば、チンパンジーの巣は 1990 年の調査時から
90 %減少していた。これはつまり、彼らの数が当時の 1 万 2000 頭から
約 1200 頭にまで壊滅的に減少したことを示している。


その主要因は森林の乱伐と密猟の増加であるという。


調査の詳細は「Current Biology」誌に発表されている


コートジボワールはニシチンパンジー(学名:Pan troglodytes verus)の最後の
営巣地のひとつであり、8000 〜 1 万 2000 頭が生息すると考えられていた。


この推計は、1989 年から翌 90 年にかけて実施された全国調査に基づいている。

劇的な減少


ところが、2007 年に前回と同様の手法で行われた調査で、
その推定が全くの間違いであることが判明した。


研究チームは次のように述べている。
「調査結果は、チンパンジーの数が切迫した状況にあることを示している。
彼らの姿をこの地上から消し去ってしまわないためには、いますぐ行動を
起こさなくてはならない」


今回、研究チームは 17 年前に訪れた 11 カ所で再度の観察を行った。


「前回チンパンジーを観察した多くの場所で、彼らの痕跡すら全く見られなかった」
と、前回調査にも参加した共著者、独マックス・プランク進化人類学研究所長
クリストフ・ボッシュ教授は述べる。


「減少は予測していたが、まさかこれほどとは思ってもいなかった」


ボッシュ教授によれば、密猟・森林乱伐の増加は人口の急激な増加と軌を一にする。


1990 年に 1200 万人だったコートジボワールの人口は、現在は推計 1800 万人。


「森林は、換金作物その他をつくり出すために伐採されている」


「そしてチンパンジーも他の動物と同じく、食肉として狩られている。
西アフリカを含むいくつかの地域で、いわゆる『誰もいない森症候群
(empty forest syndrome)』が観察されている」


「森自体は無傷であるにもかかわらず、狩猟によって動物がいなくなってしまうんだ」


複数の研究者が、人口増加と密猟・森林乱伐はリンクしていると述べている。


また、2002 年以降の不安定な国内情勢が問題を悪化させているとも言う。


しかしボッシュ教授は、この厳しい状況の一方で、
一条のかすかな希望の光を見出している。


タイ国立公園内にある営巣地では、その地方のチンパンジーの数は
まずまずの状態にある。


「そこと他の地域との違いは、第一に、そこが国立公園の中にあるということだ。
つまり、密猟から完全に保護されている」


「第二に、政情が不安定な時期には国際保護活動の支援を受けていた」


この 2 つのポイントが相俟って、長期にわたるチンパンジー
生存保護を可能にしているとボッシュ教授は言う。


「保護を真剣に考えるのなら、国際社会には保護すると同時に、
それを持続させるための投資が求められる」


しかし、と彼は続ける。もし保護のための地球規模での努力を
得られないならば、彼らの暗澹たる未来は変えられない。


「ヒトに最も近しい彼らが生き長らえられない事態をもし捨て置くのなら、と
私は私自身に問うてみるのだがね」


「ヒトの未来は、どうなってしまうのだろうね」