際立つペイリンの変人ぶり(NYTimes、10月17日付)

     The New York Times October 17, 2008
     Whale Protection Is Bolstered as Palin Objects by William Yardley


17日、連邦政府アラスカ州クックインレット(クック入り江)に生息するシロイルカ
絶滅危惧種としてリストアップした。アラスカ州知事サラ・ペイリンほかが
決定の棄却を求めている。


アンカレッジの街からでも目にすることのできる(イルカというよりも)どちらかと
いえば小型の白いクジラは、その数を 1990 年代末のほぼ半数にまで減らしており、
アラスカ先住民による狩猟の停止を含めた保護策にもかかわらず増加していない。
立海洋大気圏局海上漁業部(NMFS)の研究者によれば、過去 2 年間
クックインレットで確認されたシロイルカは約 375 頭である。


NMFS 部長代理ジェームズ・W・バルサイガー博士は公式発表の中で
「最善の手は尽くしているが、まったく回復していない」と述べている。
シロイルカは絶滅の危機にある」


『絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律(the Endangered Species Act)』に
基づいた行動計画の発表によって、環境問題におけるペイリン知事の立場が注目されている。
共和党の副大統領候補である彼女には、気候変動に関する曖昧な発言や、今年初めの、
結局失敗に終わったもののホッキョクグマ絶滅危惧種指定を阻止しようとした提言のために、
懐疑的な目が向けられている。


シロイルカのリストアップに反対するペイリンの提言は、ホッキョクグマのときと同様に、
沿岸および沖合いの石油・ガス開発を制限する可能性があることを理由としている。
また今回の決定は、アンカレッジ港の拡張や、ニクアーム湾をまたいで
マタヌスカ=スシトナ渓谷とペイリン地元のワシラを結ぶ橋の建設といった
計画にまで影響をおよぼすかもしれない。


2007 年 8 月、ペイリンは絶滅危惧種リストに反対する提言の中で述べている。
「連邦のリスト作成はまったく不必要であり、絶滅危惧種という名称を冠することで
クックインレット地域の活気ある経済に長期的で重大なダメージを与えることを
忘れてはならない」


17 日には「わが州は何年間も、クックインレットにおけるシロイルカの減少に多大な
関心を払ってきた」とした上で、だが絶滅危惧種指定は「時期尚早である」と述べた。
ホッキョクグマが指定されたときと同様、彼女は連邦政府が示すデータに挑みかかったのだ。


アラスカ漁業狩猟局局長デンビー・S・ロイドは、州のデータは「2004 年の
278 頭から現在の 375 頭に 30 %増加した」ことを示していると言う。
(NMFS は 2005 年の 278 頭と同程度に低い数字であるとしている)


テッド・スティーブン上院議員共和党)の連邦議会における議席を虎視眈々と狙う
マーク・ベギチ・アンカレッジ市長(民主党)もまた、アラスカ湾拡張を阻害する
可能性や「排水処理のための非常に高価な新設備」がアンカレッジに課せられることを
引き合いに出して、絶滅危惧種指定を批判している。リサ・ムルコウスキ上院議員
ドン・ヤング下院議員(ともに共和党)も指定反対の立場だ。


漁業当局によれば、クックインレットのシロイルカは、米国の水域に生息するシロイルカ
——そのすべてがアラスカ海域に生息するのだが——のほぼ 5 分の 1 に相当する。


海棲哺乳類保護法(the Marine Mammal Protection Act)』の下では
2000 年以降、シロイルカは絶滅したものと看做されてきた。漁業当局が
17 日に下した決定は、2006 年に環境グループから提出された陳情への
対応である。アンカレッジの環境派弁護士ピーター・ヴァン・トゥインは、
当局がシロイルカの危機を認めたことを多少の驚きをもって喜んでいると述べた。


「漁業当局が政府命令以外でなんらかのアクションを起こすなんて、いまだかつて
見たことがない。これで絶滅の危機を脱することができるなら、素晴らしいことだ。
その生息数を見れば、ほかに選択肢があるなどとは、とても思えないのだがね」


漁業当局は、シロイルカの生息数の回復は、いくつかの要因によって「潜在的に阻害」
されたのだと言う。シロイルカ座礁——クックインレット内の潮の急激な変化が、
シロイルカの大きな群を浜に打ち上げる——、一般的な開発、石油・ガスの探鉱、
水質汚濁をその要因として挙げている。当局は「 1 年以内に、クックインレット
シロイルカの保護地域を特定する法令の作成に入る」としている。