地震兵器の真実


webメディアJBPRESSに「地震兵器」に言及する記事が掲載された。
大災害を生んだ金融・エネルギー界の覇権争い―地震兵器発動?
脱原発で得をするのは誰か〜ベンジャミン・フルフォード氏
」がそれである。


この記事自体は、ラジオ番組「ずばり勝負」の内容を1週遅れで要約して紹介するもので、
その内容自体にJBPRESSが関与しているものではないが、それはさておき。


地震兵器……これは笑うところかと思っていたが、ネットで検索してみると、
どうも多少なりとも信じているひとはそれなりにいるっぽい。


なにしろベンジャミン・フルフォード氏は、かの梶川ゆきこ氏(前広島県議会議員、民主)が
東北地方太平洋沖地震は人工地震」説の根拠に挙げている御仁である。


そのフルフォード氏が
地震兵器については、読売新聞と朝日新聞が1950年代〜70年代まで何回も記事を載せていました」
と番組中で述べ、自身のブログでは
「読者より送られてきた人工地震の記事です。多くは日本の朝日新聞と読売新聞。
かつては、日本の大手マスコミも地震兵器の存在を認めていた」
と、当時の人工地震の記事キリヌキを紹介している。


新聞紙面の汚い画像でおまけに小さいものだからいちいち新聞の本文を読むことはしていないが、
「人工地震」の見出しは明瞭に読める。


人工的に地震を起こすことは技術的に可能だろうとは思う。地中深部で相応のエネルギーを
放出させればいいのだから、むしろ技術的には単純だろう。大陸プレートの接合部で実施すれば、
さらに結果の規模は大きくなるだろう。


だが、これを「兵器」として利用するのは、アイデアとしては過去あったのかもしれないが
(あるいは現在もあるのかもしれないが)実現可能かどうかという点では、
「兵器はある」と断定されると二、三歩引いてしまうのである。


2カ月前から現在までのことを思い起こしてみればいい。


確かに広い地域にわたって大きな地震があった。だが、いまわたしたちの眼前に
「未曾有」の3字を立ちはだからせる災害は、むしろ津波であり原発事故だ。


その結果、日本一国の震災にとどまらず、サプライチェーンの混乱というかたちで
世界の経済や産業に少なからぬ影響を与えたし、それはフルフォード氏が地震兵器の大本と
主張しているらしいアメリカの産業界にしても同じだろう。


もたらされる結果を厳密にコントロールできない、しかも自分たちが受ける影響の
程度も想定できないシステムを兵器利用しようなどという発想を、
いまどき誰が(北朝鮮を除いて)するだろうか。


JBPRESSの記事では紹介されていないが、フルフォード氏はさらに地震兵器は
天候をコントロールすることも可能だと、このラジオ番組で語っていたと記憶する。


地震兵器なぞという物騒なものを持ち出すまでもなく、例えば中国で
旱魃対策として人為的に雨を降らせるために空に向けてミサイルを発射したことが
何度か日本でも報道されたように、事実としてそうした試みは行われている。


だがこれは昔から行われている「雨乞い」の儀式を、科学的知識と技術的発展に基づいて、
何日間も火を焚き太鼓や鉦を打ち鳴らして天候の変化を望むよりも
多少マシにした程度のものでしかないだろう。


仮にも「兵器」として利用するならば、目的の地域に目的の雨量を
目的の期間にわたって降らせられなければ無意味だ。


中国の「雨乞いミサイル」も、まったく雨を降らせなかったか、見当違いの地域で
申し訳程度の降雨が見られたという報道しか記憶にない。


しかしこれは幸いである。まかり間違って想定以上の雨を呼び洪水被害をもたらしていたら、
場合によっては旱魃以上の災害になっていたかもしれないのだから。
3月の地震が建物を倒壊させインフラを寸断する以上の被害を、津波原発事故でもたらしたように。


さらに氏は「ずばり勝負」の中で
「今回いろいろと調べてみましたが、「ちきゅう」という船(地球深部探査船)が
地震の前にちょうど震源地でドリルで穴を掘っていたんです」
と述べている。


あたかも「ちきゅう」が震源地に地震兵器を埋め込んだかのようではないか。


海洋研究開発機構地球深部探査センターの「ちきゅう」紹介webサイト
CHIKYU HAKKEN〜地球発見〜」から、「ちきゅう」の目的を抜粋してみる。


> 「ちきゅう」は科学史上初めて巨大地震震源まで掘削し、
> そこを直接観測し、地震がなぜ発生するのか、そのメカニズムを
> 解明します。また、掘削した孔(あな)には観測装置を設置し、
> 地震発生と同時に、その情報を陸上へすばやく伝えるシステムを
> 目指しています。


震源地と予想される地点にドリルで穴を掘るのは当然なのである。もちろんそれは、
この説明を信用すればという条件付きだし、「地震兵器を設置するために穴を掘っています」
などと言うはずもないが、疑ってかかればキリがない。


地震兵器の証拠として「人工地震実験」の新聞記事を見せられても、
「そりゃ、地震カニズムの解明が目的でしょ」と思うだけである。


さらに兵器は、それを持っていると相手に思わせることで目的の半分以上を
達成できるものである。その威力が倍増すると言い換えてもよい。


それが抑止力というものであり、大国に対して有効な外交カードを持たない北朝鮮
パキスタンが核開発〜核兵器所有に執着する理由である。


地震兵器の実際の有無とは関係なく、それがある(かもしれない)と思わせられれば、
それを交渉カードに使おうとの目論見を持つものにとっては成功だろう。
逆に、そんなものはあり得ないと思われれば失敗なのだ。


そう考えれば、「大地震地震兵器によって人工的に起こされた」とあちこちで
言いふらすものこそが、実は陰謀組織のナカノヒトということになりはしないか。


陰謀論者の言辞を借りて言うならば、「そう考えるのが自然」だろう。