「毒ヘパリン」(22)—ヘパリン汚染は経済詐欺か(WSJ、4月16日付)

     THE WALL STREET JOURNAL April 16, 2008
     Economic Fraud Suspected In Heparin Contamination by Jenifer Corbett Dooren


米食品医薬品局(FDA)トップが上院委員会で、中国製原料を使った
バクスター・インターナショナルの抗血液凝固薬ヘパリンの汚染は
「経済上の理由」によるものだろうとの考えを述べた。


先月 FDA は、一部のヘパリンが、主に動物の軟骨から作られ
サプリメントとして利用されるコンドロイチン硫酸が改変された
過硫酸化コンドロイチン硫酸に汚染されていたことを発表した。


「これまでの調査結果からすると、不当に利益を得るためだと考えられる」
2009会計年度予算委員会の上院歳出委員会農業小委員会ヒアリングに出席した
アンドリュー・フォン・エッシェンバッハ FDA 局長が述べた。


過硫酸化コンドロイチン硫酸は、豚の腸由来のヘパリン有効成分と
化学的に類似しており、FDA によれば、本来の成分よりも安価に作られる。
(「悪ヘパリンが良ヘパリンを駆逐する」「FDA、汚染物質を同定」参照)


バクスター製ヘパリンに使われた有効成分は、サイエンティフィック・プロテイン
ラボラトリーズ(SPL、ウィスコンシン州ウォナキー)が供給していた。
SPL は中国とウィスコンシン州に製造施設があるが、汚染されたヘパリンは、
これまでのところ、中国の施設にのみ関連づけられる。
SPL とバクスターはともに、汚染は、粗製原料を有効成分に精製する工程を担う
中国施設に納入される前の、粗製原料の段階で発生したのだろうとしている。
SPL はまた、ヘパリン有効成分未精製原料の価格は上昇しており、
収量をかさ上げする経済的メリットは SPL 側にはない、とも述べた。


2月、バクスターの最初の発表は、数百件に上るアレルギー反応と、数件の
死亡例の報告を受けて、特定のヘパリン製品を回収しているというものだった。
その後 FDA が、ヘパリンのアレルギー反応による死亡例の報告は、
2007年1月以降62件に上ったと発表した。
しかしながら、それらの事例と汚染ヘパリンが関連しているかどうかは、
いまだ明らかではない。


フォン・エッシェンバッハ局長は、10月までに中国に3カ所の機関を
開設したいとも述べた。

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