「毒餃子」——餃子事件に見る日本メディアの責任

     国際先駆導報 2008年03月03日
     従餃子事件看日本媒体責任

中日関係が良好と言えない中で、中国メディアが国民に冷静な対応を
呼び掛けている時、日本メディアはひたすら騒ぎ社会を煽り立てていた。
いま、彼らは自らを省みるべき時ではないか。


「日本の消費者が中国冷凍餃子を食用して中毒に至った事件」は、1カ月余りが経過して、
いまだ終止符は打たれていない。


2月28日、国務院は記者発表を行い、今回の事件は残留農薬による食品安全事件ではなく、
人為的なものである可能性があるが、中国の管轄内で毒物が投入された可能性は極めて
小さいと発表した。


しかし、事件が中国食品および中国国家のイメージに与えた損害は、既に挽回
できないほどであり、日本メディアがそこで果たした“功績”は、消すことはできない。

妄想の下に結論づける新聞の背信


1月30日16時11分、日本の共同通信が第一報を報じた
——「千葉県の一家、中国産冷凍餃子を食べて中毒」。


その後、日本の主要メディアは一気に13本の関連ニュースを報じた。
翌日には、さらに多くのメディアが報道合戦に加わり、「餃子中毒事件」から
毒餃子」へと、ことばをエスカレートさせていった。


日本の右翼メディア「産経新聞」は長々とことばを連ねるだけに飽き足らず、
北京駐在記者のブログを MSN 産経ニュースのトップに据えた。
発行部数最大の保守新聞「読売新聞」は「中国産餃子」を特に強調して、明らさまに
責任を中国に押しつけた。


共同通信は、通信社としての優位性を発揮して、この日、続けざまに12本のニュースを
配信した。
そのうち1本は「“毒餃子”事件は、北京オリンピックの食品安全問題に不安を抱かせる」
との内容だった。


翌日以降も共同通信の暴走は止まらない。
中日双方の当局から正式な調査結果が報告されないうちから、「“毒餃子事件”は
工場の待遇に不満を持つ人物による可能性がある」と報じた。


いったい、人為的な「毒物投入」なのか、それとも「残留農薬による食品中毒」なのか?
そうこうするうちに、日本メディアは後者を信じたくなったようだ。
それを示すかのように、中国産包子と鯖から「残留農薬」が「発見」されたのだ。


その農薬の濃度は中毒を起こすほどではなかったのだが、彼らはそのことには無関心で、
ただ食品中に農薬が残留していたことにのみ注目し、これを中国産食品の例として
取り上げ、餃子から検出された農薬が中国の製造過程で混入されたものであることを
証明するに足るとした。


日本政府関係部門とメディアは、論証には不十分なニュースを非常に巧みに組み合わせて、
相関的な「証拠」をでっち上げ、メディア上で再度輿論を煽った。

煽動は右翼だけではなく、輿論の主流にまで広がった


食品安全の問題が現出して、メディアは過度に非難するには当たらない部分にまで、
予断を伴った関心を寄せているが、事実真相がいまだ明らかでない状況にあって、
メディアは道理をわきまえず、事の是非を歪曲して、ひたすらその矛先を中国へ向ける。
その非難は、到底受け入れ難いものだ。


さらに腹立たしいのは、過去においては中日間に対立をもたらしたのは右翼メディアに
限られたものだが、このたびは、共同通信をはじめ社会に対して一定の公的信用力が
あると看做されている日本の主要メディアが煽動に尽力していることだ。


確かに、日本メディアの中にも理性的な報道がなくはない。


3月1日、朝日新聞が発表した社説「ギョーザ事件―冷静に対立を解きほぐせ」は、
「中国に求めたいのは、さらなる捜査だ。日本の警察は、日本で農薬が混入した可能性が
あることも捨てないで捜査した方がいい。この事件は一国だけでは解決できないからだ。
中国産の食品なしには日本人の食生活が成り立たない」と説いている。


類似の反省的見地は、同日の日本経済新聞社説「日中は冷静に捜査進めよ」の中にも
見られる。
「緊密な捜査連携で真相を科学的に究明することが急務だ。今回の事件が表面化して
日中双方の国民感情も悪化している。相互不信は両国にとって決して利益にならない」


日本メディアの中にも、こうした理性的な声はあるのだが、あまりにも少ない。

輿論の動向は中日関係に影響する


実のところ、こうしたことは奇怪なことではない。


例えば中日のサッカーの試合においては、少数の中国サッカーファンが日本選手に対して
ブーイングを行い、日本メディアはそれを大々的に取り上げて報道した。
反して、中国メディアは中国国民に冷静な行動を呼び掛けた。


日本メディアがひたすら中国を批判する時、実は自身が反省すべきであることを
彼らは忘れているのだ。


日本の新聞発行部数は、ややもすれば数百万部を数え、その報道は自然と日本国民の
中国観を左右する。
中日関係が2007年後半から次第に好転し始めた状況下、日本メディアは中日の大局に
一層の重きを置いて、冷静で客観的な報道に徹し、中日友好の努力を増進する中で、
そのあるべき責務を果たすことができるのではないか。

3月1日 朝日新聞社説「ギョーザ事件―冷静に対立を解きほぐせ」

日本中に衝撃を与えたギョーザ中毒事件の捜査が、難しい局面を迎えている。
中毒の原因となった農薬が、どこで混入したのか。この重要な点をめぐり、ギョーザを
つくった中国と被害が起きた日本の捜査当局の見方が、真っ向からぶつかってしまったからだ。
違いを鮮明にしたのが、中国公安省の開いた記者会見である。
ギョーザの製造工場で働く従業員らの聴取結果を踏まえて、「中国で混入した可能性は
きわめて低い」とし、捜査に必要な物証や鑑定結果の提供をめぐって、日本側は非協力的だと
批判した。
日本はこれまでの捜査で、逆に「国内で混入した可能性は低い」としていた。密封された
袋の内側から農薬が見つかっている。日本の別々の港で荷揚げされたギョーザに農薬が
入っていた。そうしたことが判断の理由である。
それだけに、中国の発表内容は日本には寝耳に水だった。つい先ごろ、日中の捜査当局者が
行き来し、「連携して調べる」と確認し合ったばかりでもある。
農薬の分析結果などは可能な限り中国に伝えているとの思いも、日本側にはあった。
警察庁の吉村博人長官が中国の発表について「看過できない部分がある」と語ったのも、
無理からぬことだ。
だが、「向こうで混入した」と互いに疑いをぶつけるだけでは、解決は遠ざかるばかりだ。
ここは冷静にボタンをかけ直し、あらためて両国で捜査を尽くす必要がある。
なによりも中国に求めたいのは、さらなる捜査だ。今回の発表内容では、とても納得できない。
日本の警察には、両国がうまく連携するための努力を粘り強く続けてもらいたい。
そのためにも、日本で農薬が混入した可能性があることも捨てないで捜査した方がいい。
この事件は一国だけでは解決できないからだ。
連携するにあたっては、対立を一つひとつ解きほぐしていくことも大切だ。
たとえば、ギョーザの袋の外側から農薬が中にしみこむかどうかという実験結果が、
日中で食い違っている。実験した時の室温などの条件が異なっていたようだが、
確認のための再実験を両国で一緒にやればいい。それが難しいのであれば、どんな実験方法が
適切かを話し合い、それぞれが納得できるかたちで確かめ合うことが欠かせない。
このまま原因がわからなければ、日本の消費者は安心できないし、中国産の食品は
敬遠され続ける。一方で、中国産の食品なしには日本人の食生活が成り立たない現実もある。
うやむやなままでは、双方にとってマイナスだ。
4月には胡錦濤国家主席の訪日が控えている。事件の真相解明への真剣な姿勢が中国から
うかがえなければ、再び日中関係を覆ってきた暗雲を追い払うことはできない。
そうしたことも中国はよく考えてもらいたい。

3月1日 日本経済新聞社説「日中は冷静に捜査進めよ」

中国製冷凍ギョーザ中毒事件を巡り、最も冷静であるはずの捜査当局同士が対立を
深めている。日中の捜査当局が有機リン系殺虫剤メタミドホスの混入について「自国での
可能性は極めて低い」と主張し合い、互いに不信を募らせている姿はいかがなものか。
緊密な捜査連携で真相を科学的に究明することが急務だ。
対立の発端は中国公安省の余新民刑事偵査局副局長による2月28日午前の記者会見だった。
「中国でのメタミドホス混入説」を全面否定しただけでなく、日本の警察当局に物証や
鑑定結果の提供を拒否されたとして「深い遺憾」を表明した。
これに対し警察庁の吉村博人長官は同日午後の定例記者会見で、中国側の遺憾表明に
「看過できない部分がある」と反論した。長官は「捜査に役立つ資料はすべて渡しており、
『遺憾』と言われるのは理解できない」と不快感を示した。
福田康夫首相は先に来日した唐家セン国務委員(副首相級)と真相究明のため緊密な
協力が重要だとの認識で一致した。警察庁次長が25―27日に訪中し、公安省と「緊密な
捜査連携」で合意したばかりだった。その翌日、公安省幹部が警察庁に予告もなく
記者会見に臨んだ。
泉信也国家公安委員長が「中国側から特段の情報、分析結果の提供がないなか、突然
会見し、考え方を公にすることは問題解決にならない」と批判したのも無理はない。
捜査当局は的確に情報交換し、冷静で客観的な捜査を進めてほしい。
今回の事件が表面化して1カ月が過ぎ、日中双方の国民感情も悪化している。日本では
中国製食品の買い控えが一段と広がっている。一方、中国メディアが主に中国当局
見解を報道することで、インターネットには「日本に謝罪を要求する」などと対日非難の
書き込みが急増している。こうした相互不信は両国にとって決して利益にならない。
中国側は4月に予定される胡錦濤国家主席の日本への公式訪問、8月の北京五輪などを控え、
真相究明よりも事件の幕引きを急ぎたいのかもしれない。しかし、不透明な決着では
日中関係がこじれるだけでなく、中国の「食の安全」に関する国際的な信頼も回復できない。