米ビジネスウィーク「毒餃子、日本企業の統合を阻止」

     BusinessWeek February 6, 2008
     Poison Dumplings Kill Japanese Merger by Ian Rowley


中国製餃子の殺虫剤汚染スキャンダルは激しい議論を巻き起こし、
日本たばこ産業日清食品の統合をストップさせた


米市場夜間取引の落ち込みは、2月6日に日経225インデックスが4.7%下落したことが原因だ。
世界有数の即席麺企業、日清食品の株価が、汚染餃子スキャンダルで8.5%も急落したのは、
思いもよらないことだった。


日本たばこ産業JT)の食品事業子会社ジェイティフーズが中国から
10ケース以上輸入した餃子の一部が、毒物に汚染されていた。
日清の株価は、その最も新しい被害者だ。
汚染餃子のニュースは先週報じられ、中国の餃子製造企業・天洋食品製食品の
大量回収を引き起こした。
この一大スキャンダルは日本で、改めて消費者を中国産品の安全性に対する不安に陥れた。

統合条件をめぐって分裂


2月6日、その安全性不安は、大きな人身御供を要求した。
JT と日清は、今回のスキャンダルを受けて、予定されていた
冷凍食品事業の統合を白紙撤回したのだ。
JT が冷凍食品最大手の加ト吉を約10億ドルで買収した後、
その49%を日清が所有するという内容だった。


しかし今回、JT ブランドに“けち”がつき、日清は統合条件の変更を要請した。
日清食品安藤宏基社長は2月6日、「中国製餃子の殺虫剤汚染を受けて、安全基準実施の
イニシアティブを取るために加ト吉所有比率を50%に引き上げたいと申し出たが、
JT から拒否されたため、計画の撤回を決めた」と発表した。
「今回の餃子スキャンダルは、食品業界全体の試金石となる。日清は
責任的な立場にある企業として、食の安全を牽引していきたい」


JT は新聞に謝罪広告を出したが、日清とは別に記者会見を開き、
出資比率についての討議と餃子スキャンダルは無関係であるとしたうえで、
木村宏社長は「まずやるべきは、問題の解決だ」と述べた。


木村社長はまた、商品回収発表以前の1月28日に JT 株が8%下落したことによる
インサイダー取引捜査の可能性については、「その時間に問題に気づいていた社内の
人間は限られている、インサイダー取引の可能性は考えづらい」と述べた。
2月6日、JT 株は市場全体を上回り、0.9%の下げにとどまった。

行き詰まる“犯人探し”


JT が、どのように汚染が起こったかの答えを知りたがっているのは確かだ。
問題は1月30日、ジェイティフーズ天洋食品から輸入した餃子が
有機リン系殺虫剤に汚染されていることを確認した日に遡る。
被害者には、餃子を食べた後、下痢と嘔吐に苦しんだ1家族5人を含む。
うち5歳児が意識不明に陥り、家族は入院した。
餃子からは、有機リン化合物メタミドホスが検出された。


しかし、日本中で汚染原因についていくつもの仮説が立てられる間にも、
納得のいく説明は困難であることが分かってきた。
中国メディアは、餃子の輸出前検査では有毒物質は検出されておらず、
製造工場に落ち度はないと報じた。
一方、日本の舛添要一厚労相は2月5日、「状況証拠から判断して、犯罪の可能性を
考えざるを得ない」と毒物混入が故意であった可能性を示した。
しかし、たとえそうであったとしても、ともにその殺虫剤の使用が禁止されているはずの
日本と中国のどちらで、そうした犯罪が行われたかを見分けるのは難しい。


2月5日、日本の卸売業者が、昨年天洋食品が製造した餃子から高濃度の別タイプの
殺虫剤ジクロルボスが検出されたと明らかにして、ジクロルボス汚染による健康被害
報告されていないものの、状況はさらにややこしくなった。
問題の解決と、的外れな政治的論争を避けるため、中国および日本当局は
2月6日に会合を持ち、協力して原因究明に当たることに合意した。


もっとも、すべてが明らかになったとしても、アナリストが歓迎していた取引が
破談したいまとなっては、日清と JT の株価が毀損されたことに変わりないのだが。