す、す、スゲエ、いまどきの自販機ってば

     BusinessWeek January 22, 2008
     The Va Va Vooming of Vending Machines by Aili McConnon


チートス、M&Ms、プレッツェルiPod
湿気たピーナッツや、たっぷり防腐剤入りライス・クリスピー・スクエアを売っている、
自動販売機」というと即座に思い浮かぶ、薄汚れていてみすぼらしいマシンのことは、このさい忘れよう。
いまどきの自販機は魅力的だ。
空港の自販機では、デジタルカメラやオーデコロンといった贅沢品は言うにおよばず、
ソフトウエアさえポケットの中の小銭ではなく、プラスチックのカードで買える。


ATM、空港でのチェックイン、キオスク、地下鉄の券売機までクレジットカードが使えるなんて、
ますます便利になってきた。
そしてもちろん、オンラインショッピングでは多くのひとが、数千ドルとは言わないまでも、
数百ドルの買い物を、商品に触れることも、生きた販売員とやり取りすることもなく購入するようになった。


買い物客の中には、厚かましい販売員のセールストークに煩わされることを嫌うひともいる。
「デパートに香水を買いに行ったら、まるで世の中の全部のニオイに襲われたように感じるわ」
と言う、ニューヨーク・ロングアイランドシティ在住のマデリン・ウォレスは、
クイーンズ・センターの、ジェニファー・ロペスデビッド・ベッカム・ブランドの香水を買える、
コティの新しい自動販売機がお気に入り。


自動化されたショッピングでは、“次の段階”に進むサービスには接することがない。
「オンラインショッピングと同類の利点だが、直接的な満足度にはつながっていない」と、
空港やマーシーズ・ストアで iPod を売る販売機やソフトウエアをつくっている
ズームシステムズのゴワー・スミス CEO は言う。
マーシーズでは、2005年にテストを開始して以来、富裕な女性客の好評を得たので、
いまでは400店鋪で販売の自動化を展開している。


昨秋、エリザベス・アーデン、コティ、語学ソフトウエアメーカーのロゼッタ・ストーンは、
ズームシステムズと契約した。
これらの企業は、単独店を出せない場所や閉店した既存店にズームシステムズのマシンを導入する。

セルフサービスのアップグレード

自動販売機は従業員の人件費を抑え、普通の店鋪が閉まった遅い時間でもずっと開いているが、
その利点は20世紀初頭の、コインを入れるとほかほか料理が出てくる“オートマット”が実現している。
ガラスとクロームでできたその骨董品は、ラムの煮込みとチキンポットパイ(チキンシチューのパイ包み)を、
はらぺこのフィラデルフィアンとニューヨーカーに売っていた。
その中には、1927年に有名な「Automat」(オートマット)を制作した画家のエドワード・ホッパーもいた。
1990年代には自動販売機は、バブル景気を謳歌する日本中で増え始めた。
飲食物がメインだったが、ビジネスシャツ、傘、生花そして…そしてポルノも売られていた。


アメリカの新しい高機能マシンは、ソーダやスナックを売る自販機よりも、
ずっと滑らかで、ハイテクで、対話的なロボットアームを使って商品を取り出す。
例えばクイーンズ・センターの、金と銀で彩られ、J.Lo とベックスの
実物よりも大きな絵が描かれたコティのマシン。
利用客はボタンを押す代わりに、タッチスクリーンで商品を選び、必要な指示を与える。
フラットパネルテレビが絶えず音楽とともにデモンストレーション映像を流している。


エリザベス・アーデン・キオスクのマシンは、“バーチャル・ビューティーコンサルタント”とでも呼ぶべき、
さらなるハイテク機能を備えている。
利用客の肌タイプに合わせたベスト商品を提案するのだ。
コティのマシンでは、利用客がボタンを押すとサンプルがシュッとひと吹き、
香りを確かめることができる。

すべての消費者(特に若年層、富裕層)を呼び寄せる

コティのマーケティング担当上級副社長デニス・ケオーは、自動販売機で新規顧客
——とりわけ、コティの香水を販売しているデパートを訪れない若年層——を引きつけたいと言う。
しかし、最近の金曜午後にクイーンズ・センターでコティのマシンを利用した顧客から判断すると、
いまのところ利用客のほとんどが、新規ではなくコティの常用者だ。
クイーンズ在住のワンダ・サットンは、ジェニファー・ロベスの J.Lo Glo. が好きな娘に
次回プレゼントを買う時は、行列を避けてマシンを利用するつもりだ。


これまでのところ、飛行機が遅れ、長時間のフライトに飽き飽きしている裕福な旅行者が、
おおむね最大の購買者だと、消費市場リサーチ・コンサルティング
エンヴァイロセル創業者パコ・アンダーヒル CEO は言う。
「遅くに到着して“巨大な犬小屋”から出てきた彼らは、空港という浜辺に打ち上げられた
遭難者のようなものだ。彼らは、子どもや妻に“平和の供物”を捧げなくてはならない」


ズームシステムズのスミス CEO によれば、ラスベガスのマッカラン国際空港では、
iPod、コティの高級フレグランス、ロゼッタ・ストーンの語学ソフトの売り上げが、
1平方フィート当たり年間4万2000ドルに上る。
従来の空港内専門店では、1000ドルが普通だ。

目新しさは古びるもの

空港は場所としては有利かもしれない。
しかし一部の小売り専門家は、もっと広いスケールでのこうした自動販売機の導入には懐疑的だ。
市場指標リサーチャーであり
「Call of the Mall: The Geography of Shopping」(『なぜ人はショッピングモールが大好きなのか』)
の著者でもあるアンダーヒルは、20年間にわたってセルフ・サーブ・マシンを研究してきた。


彼が言うには、ATMの素晴らしい成功の一方で、大学キャンパスの
プリンターカートリッジ自販機のような、おびただしい失敗もあった。
イデアとしては、夜遅くに宿題をやる学生や、
サプライヤーが早くに閉まってしまう地方のオフィスの需要があるはずだった。
「コンセプトとしては結構なものだった。だけどそもそも、学生や地方の
ビジネスマンにとって、それはそれほど深刻な問題じゃなかったんだ」


ズームシステムズが提供するブランドの主なターゲットである若年層は、気まぐれだ。
南カリフォルニア大学マーシャル・スクール・オブ・ビジネスの
マーケティング准教授ラルス・ペルナーは言う。
「確かに目新しさはアピールポイントですけど…その目新しさに飽きちゃったら?」