新年の決意、Web2.0 のための

     BusinessWeek January 8, 2008
     New Year's Resolutions for Web 2.0 by Sarah Lacy


わたしと夫は、クリスマスをメキシコのビーチで過ごしました。
フィッシュタコスを肴にピナコラーダをひっかけながら、わたしは、
わたしが責任を持ってできることを何かしなくちゃ、と思いました。
新年の決意表明のような。
そうして書き出した決意表明のリストは、以前わたしがつくったリストと、なんだか似ています。
よく食べること、もっと運動すること、もっと一所懸命に働くこと、何事ももっと上手にこなすこと。
次にわたしは、夫のためのリストをつくってあげようと思いました。
あなたは分かってくれるでしょ? 夕食に追加で料理をつくってあげるようなつもりだったのよ。
でもそれは、「何事ももっと上手にこなすこと」とは、正反対のことだったみたいです。
新年のスタートとしては、最悪よね。


そこでわたしは、インパクトがもっと長もちしそうなリストをつくることにしました。
さあここに、わたしが身近に見る Web2.0 世界のための決意、訓戒、予言です(特に
GoogleDiggFacebook といった消費者向けウェブサービスのための)。

収益狙いは争いのもと

まず初めに。大きなものをけがすような収益を追い求めないこと。
消費者向けウェブサービスで大きくなるカギは、まず利用者を惹きつけて、
それをお金に換える方法を見つけることだということは分かっています。
1990年代、目玉商品にかかるコストが、それこそ目玉が飛び出るような
ものだった頃には、こんな考え方はほとんど不可能でした。
いまやウェブビジネスを始めるためのコストが急落して、
目玉商品モデルは現実的な意味あるものになっています。


問題はここにあります。
ユーザーは無料サービスに慣れています。
あとでそこからお金を取ろうとしたら、ひと波乱起きるほどに。
「コミュニティー」を足場にするウェブサイトでは、その反発は険悪なものになります。
ユーザーの怒りの声はあちこちに伝播して、とてつもなく大きなものになるでしょう。
Facebook なんて、ユーザーの権利を侵害すると見なされたサービスは即座に撤回しますもんね。
GoogleYouTube が、1日1億タイトルもの投稿動画から収益を上げられないのは、
なぜだと思いますか? そんなことをしたら、閲覧者やコンテンツ投稿者が
怒りだしやしないかと、経営者は怖れているんです。
動画が始まるときに見せられる邪魔っけな広告で、
がっぽり儲けているはずだろうってね。


ウェブサイトは、けっこうキビシイ状況の上に成り立っています。
彼らには利益が必要です。
そしてわたしたちユーザーは、いつだって二者択一を迫られています。
利用料を払うか、広告を見るか。
わたしはソーシャルサイトを利用するときはいつだって、
広告を見ることを選んでいますよ。

動画サイトに持ち込まれる毒

Web2.0 の経営者にとって、利用者増と収益増の両立はそう単純ではありません。
Twitter を考えてみましょう。
まるでコショウをぱぱっと振りかけるような、短く素早いコメントのやり取りでの
ユーザーどうしのつながりをつくり出しています。
わたしは何カ月もの間、Twitter の愛好者は、シリコンバレーに響くエコーの
届く範囲に限られるものとばかり思っていました。
ところが先月、パリにいるとき、世界中の技術者や起業家までもが
Twitterイカレていることを悟りました。
Twitter はずば抜けて質の高い、Web2.0 の門をくぐり抜けた
数少ないウェブサイトのひとつなのです。


Twitter の素晴らしさは、その単純明快さにあります
——Google のトップページのような単純さです。
わたしは、Twitter のその単純さの中に広告が持ち込まれるときに
起きるだろうことを心配します。
Twitter の最初の質問「What are you doing?(なにしてんの?)」。
携帯電話で最初に聞かれるようなこの質問に、電話に出るたびに広告がついてくる
なんてこと、だれも求めません。
Twitter をやっているときにモニターに広告が現れることを
だれも望まないのも、それと同じです。


すでに Twitter の、人気のあるサードパーティー製アプリケーション
「Twitterific」(Mac用クライアント)は、広告か会費かの選択を
ユーザーに求める製品をつくり始めました。
インターネット起業家・開発者のマーク・アンドレセンが製作した、
SNS作成ツール「Ning」用のアプリケーションです。
ユーザーに毒を拾わせる、それは新モデルではあるでしょう。
その毒がほかのサイトにも広がるのかどうか、それをわたしたちが知るのに、
そんなに長くはかからないことは間違いありません。

使用上の注意

ここで出すビジネスモデルには、なんの裏づけもありません。
わたしは、わたしの頭の中にあることを言っているだけなので、
適当に取捨選択してくださいね。
オンラインでの動画の起業についてあれこれ考えることで、わたしの頭が
混乱していたり疲れているのだとお思いなら、Web2.0 の世界で生きていない、
息もしていないひとにとって、それがどのようなものか、想像してみてください。
YouTube のブレークアウトだけが驚くべきことだったのでしょうか?
オンラインビデオに変化が表れる今年、ユーザーはどう変化するのか?
開始時の反応以上のものが、ありそうです。
YouTube は好きさ、でも…」といったね。


ベンチャーキャピタリストのみなさんへは、こう言いましょう:
わたしがここで言うような心配に対するよい答えがなければ、
GoogleYouTube に16億5000万ドルも出さなかったでしょうよ。
わたしがなにか言うことで不安があおられるというのなら、
電源コードを引っこ抜いてしまいなさい!

過渡期の混乱

わたしが企業買収について考えるとき、2000年代初めに自分の会社を売却したあとの5年間を、
おもてに出ずじっと過ごしていた起業家に、市場が何を残しているのかも見たいと思っています。
彼らは、彼らがなにものであるかを知っています。彼らがつくった del.icio.us
Flickr のような、ユーザー自身がコンテンツをつくるウェブサービスは好スタートを切りました。
このような企業はしばしば、情熱的に“イカレた”連中や、ビッグアイデアを持つひとたちが
つくります。彼らはシリコンバレーの創業者タイプではありません。
そして彼らは、Web2.0 が過熱する以前から、長いこと売り手として存在していました。
彼らは会社を1億ドル以下で売り、インターネットの過渡期に Yahoo!
Google のような大きな企業に吸収されました。
スマートな若い世代の起業家たちは、買収条件として一定期間、
新しいオーナーの下で働いていました。懲役刑に服する囚人のように。


そうして刑期を満了した“元囚人”の多くは、いまは新しい仕事を探して
シリコンバレーをうろついています。
最初に手にした数百万ドルか、それより多くの資金によって、
彼らはこれから大きなことをなすだろう、というのが、わたしの予測です。


そして最後に、すべてのひとのために:
気を引き締めなさい。麻薬中毒者の禁断症状の発症とクスリを求めるサイクルが
どんどんエスカレートするように、Web2.0 では、広告も、メディアも、ブログも
検索サービスもが荒れ狂う海の中で、立ち直るまでの数年間を過ごすことになる、
そんな時代に入りつつあります。
Facebookニューズ・コーポレーションMySpace のような明らかな
勝者でさえ同様です——もっとも彼らは、うまく切り抜けるでしょうが。
YouTube なりたがりやコミュニティー構築に失敗したオンラインビジネスのような、
たくさんの泡沫 SNS には、この悪天候をしのぎ切ることは難しいでしょう。
売れる間に売ってしまいなさい。年末までに TechCrunch の Dead Pool に
リストアップされる倒産企業名は、数千にもなるでしょうから。

※TechCrunch:ビジネスウィークの大予言「2008年10の出来事」「ウェブクラッシュ2.0」の項を参照