三峡ダム崩壊の序曲?


  中国といえば、目下の関心事は「三峡ダムのXデー(決壊)は、いつ?」。
  ということを友人に話したら、「決壊すると思う根拠はなにか」と問われましたが、答えは「中国だから」。
  まあ、それは冗談としても、ダム建設に伴う環境破壊とかについては、やはりあれこれ言われているようで……。

環境保護担当者、三峡ダム周辺住民が直面する地滑り災害に警告

     地球能源網(worldenergy.com.cn)2007年9月10日
     環保人士警告 三峡移民城面臨滑坡災害


三峡ダム本体工事が完了して1年※、地質災害は地滑りなど、はっきりした形で表面化している。
中国鉱業大学卒業後、環境地質高級技師を務める柳勇氏は、今後、水位が増すにしたがって
地質災害はさらに頻発し、沿岸の工事区域は地滑り災害の危機に直面していると述べる。
  (※ダム本体工事は第2期。現在は第3期工事が進行しており2009年完成予定)


現在中国政府は、三峡ダムによる地質災害対策に、毎年57億元を計上しているが、
その災害の大きさに対しては、いかにも焼け石に水と言えよう。


柳勇氏は、本取材に次のように答えた。


「今年6月、揚子江に沿ってダム工事区域を歩き、その状況を見るにつけ聞くにつけ、震撼しました。
三峡ダムが引き起こす地質災害は日を追ってその厳しさを増し、心配で気が気でありません。
政府はすぐにでも有効な措置を取り、地質災害を解決すべきです。さもなければ、
今後災害は一層頻繁に起こり、損失はさらに大きくなるでしょう。


三峡ダムが引き起こす地滑りなど一連の地質災害は、まだ半ばです。水位が高くなれば、
工事区域では土壌に水がしみ込み、軟弱になった地盤が地滑りを起こします。近年、
そうした災害によって死亡者を出し、経済的な損失も大きなものとなっています」


新華社の報じるところによれば、湖北省三峡ダム工事区域では、今年に入って7件の地滑りが
発生しており、揚子江宜昌海事局は7月、地質災害発生を通告した。工事区域にあたる
湖北省ズグオイ、巴東2県の揚子江沿岸7カ所で、地滑りによる激しい地形変化が見つかった。


柳勇氏は、今回の実地調査により、今後三峡ダム工事区域が
新たな地質災害の危険を増していると考える。


彼は特に、工事区域沿岸住民の別地域への移住に関心を持っている。住民が地質災害の
脅威にさらされていることを政府は優先的に考慮し、住民移住の安全を図るべきだと説く。


着工する以前の早い段階で、政府は三峡ダムによる地質災害の可能性に気づき、専門家を組織して
地質災害の可能性とその解決策について研究報告書を提出させた。その報告書によれば、三峡地域は
地質環境が複雑であり、別な場所に移住するにしても、住居建設途中で地滑り、地形変形、
崖崩れが発生するなど多くの問題がある。そのうち地滑りによる災害が最も突出して普遍的に発生する。
現在、三峡ダム工事区域で頻発する地滑りが、専門家の予測が正しかったことを実証している。


一昨年、重慶・奉節の中国水利部長江委員会は開県、万州、石柱など事故の多発する8地区に
地滑り・土砂崩れの監視拠点を設置した。
現時点で三峡ダム工事区域での地滑りは大小数千回に及び、毎年1億元を超える損失が発生している。
長江委の計画では、(1)地下の深いところに位置変化の測定器を埋設、(2)地表および建築物の
亀裂の変化を観測し、同時に(3)山頂から山裾まで等間隔に杭を並べ打ち、その間隔の変化を
観察することによって、山の地形変化を測定するとしている。


中国政府は地質災害を防ぐために多くの措置を講じているが、工事の進展に伴って水位はさらに
高まり、それにつれて沿岸部での地質災害の危険性は増加する。近年では毎夏、重慶と湖北の
三峡ダム工事区域沿岸部で、広い範囲にわたる地滑りが発生している。


中国において、三峡ダム造成のマイナス面は報道のタブーとなっている。そのため中国メディアでは、
地滑り災害は報道されるものの、それに関する論評はなされず、ただインターネット上でのみ、
ひとびとは意見を発表することができた。


しかし、三峡ダムは国内外メディアが並々ならず注視している。
8月29日、米「ウォールストリート・ジャーナル」紙が、三峡ダムが引き起こす地質災害について、
ダムがせき止める水量による膨大な圧力によって山が崩れるという地質学者の警告を引用して報じた。


「人民日報」は、ウォールストリート・ジャーナルの報道は、ダム建設反対派、
反中国派によるデマをそのまま報じたものとする反論を掲載した。