労働貴族サマのおっしゃることは


人材派遣会社に登録して、派遣されて働く“労働者”がみんな、
“人材派遣会社の正社員になること”を求めているんだろうか。


 > 「登録型派遣は禁止を」高木連合会長
 > 2007年09月13日
 >
 > 連合の高木剛会長は13日の記者会見で、見直しの議論が始まる労働者派遣法について、
 > 日雇い派遣のような登録型派遣は原則禁止を 求める方針を明らかにした。
 > 企業側の求めに応じ人材会社が登録スタッフを一時的に雇って派遣する仕組みでは
 > 「雇用が安定しない」と指摘。人材会社の正社員を派遣する常用型に限定するよう求めていく。
 > この問題で、経営側は派遣労働者の直接雇用義務の廃止など一層の規制緩和を求めており、
 > 規制強化への転換を求める連合など労働側と対立が激しくなりそうだ。
 > また、安倍首相の辞任表明について「体調問題があっても、責任を問われる辞め方。
 > 早く後継選びをして、政治の空白ができないようにしてもらいたい」と述べるとともに、
 > 次期衆院選の準備を急ぐ方針を示した。
 http://www.asahi.com/job/news/TKY200709130383.html


なんかどうも、実状とズレてるような気がするなあ。


高木さんは以前、べつなところで「派遣されて働いているひとは、みんな正社員になりたいんだ」
と断定してて(たしかココ↓で読んだ)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20070612/127146/
そういう考え方を前提に、まず「正社員の待遇改善」を掲げて
そこに派遣社員やパートタイマーを取り込もうとしてて、
それがどうもうまく受け入れられていない(当たり前だが)と感じたらしく、
やっと“正社員に限定せず”“派遣・パートタイマーと連携して”
労働条件の改善を要求していく、という方向に舵を切ったと思ったら


 > 非正社員支援に重点 連合運動方針
 > 2007年08月24日20時34分
 >
 > 連合は24日、パートや派遣など非正社員の支援を強化する08年度から2年間の
 > 運動方針案をまとめた。地方組織に「非正規労働センター」を設け、
 > 労働条件改善に取り組む。若者に広がるワーキングプア(働く貧困層)対策として、
 > インターネットを通じた労働相談や組合への加入促進もはかる。
 > 10月の定期大会で了承される見通し。格差是正が社会的な課題となるなか、
 > 「正社員・公務員クラブ」との批判を避け、労働者の3人に1人まで増えた
 > 非正社員を取り込むことで、組織率の向上もめざす。
 > 個人で加入できる地域ユニオンや、外国人労働者の相談窓口も増やす。
 > 来年にも想定される労働者派遣法の改正については「これまでの緩和の流れは絶対に認めない」
 > (古賀伸明事務局長)とし、日雇い派遣の制限などを求めていく方針だ。
 http://www.asahi.com/life/update/0824/TKY200708240365.html


冒頭の、13日発表の方針では、またぞろ“みんな正社員にしろ”と言ってる。


人材派遣会社に登録してるひとは、たいてい複数の会社に登録して
自分にできる仕事がまわってきたら受ける、というふうにやってると思うけど、
正社員となると1社にしか勤められないわけで、派遣会社は派遣会社で、
余分な人件費(現状ではとりあえず登録して待機してるひと=なにも仕事をしていないひとも、
正社員にしてしまえば給料を払わなくてはならない)を抑えるために雇用者数を絞るだろうし、
そしたらあぶれる人間が大量に出るんじゃないか。
あぶれたら“正社員じゃないから”仕事できないわけでしょ。
「いま登録してる人材は全部社員として雇え」なんて、派遣会社だけに全部おっかぶせる
なんてリクツは、どう考えたって、ムリだしね。


たしかに、正社員になって安定したいと思ってるひとはいるだろう。
殊に、就職氷河期にぶつかって、就職したいのにできなかった、というひとは
切実にそれを求めてるのかな、と思う。
でもそうじゃない人間も、けっこういるんじゃないですかね。


いまの連合の考え方というのは、たとえてみれば
戦後の劣悪な栄養状態を補うための学校給食をいまもって同じ思想で続けてる、
てのに似てるんじゃないか。
まあ、これも、「学校給食だいキライ」だった自分だから思うことなのかも、しれません。


学校給食も、「こどもに栄養を与える」から「食育」という
もうちょっと幅の広い考え方に移行しつつあるようですが、
労働運動も、そういう考え方の転換が必要なように思います。


「雇用が安定しない“派遣”という労働形態はだれも求めていないし、
もともと連合は反対の立場だった」と、高木さんなら言いそうな気がするけど、
それに対して自分は、やむなく派遣という立場で働いてる人間はもちろんいるだろうけど、
自ら派遣という働き方を選ぶ人間もいるんじゃないの、そういう人間にとって、
自分の働き方を“違法”と決めつけられて機会を奪われるのは、迷惑な話だよなあ、
と思うってことですね。


高校に上がって学校給食がなくなって、
残念に思うやつもいたかもしれないけど、
自分はすごい嬉しかった。
弁当つくる母親には、負担かけましたけど。


実際のところ、自分も含めて非正規で働いてるひとの求めてるものって
ずっとずっとシンプルだと思うんですよ。


 ・安定して仕事にありつけること
 ・やっただけの報酬を得られること
 ・業務上のケガや病気の際も最低限保障されること


この3つが満たされないことが問題なんであって、
正社員にならなければ満たされないものでもないハズだし、
逆に、正社員であっても満たされていないひとはいるんじゃないのか。
ワーキングプア」は、非正規社員だけの問題じゃないですよ。
日本国内に限って見れば、デフレ経済のあおりで、正規・非正規にかかわらず
労働の価値そのものが下がってる、ってことでしょ。


高木さんが、こうまで「正社員」にこだわるのは、
組織率を高めたい、というのが第一なんじゃないかなんて、思っちゃいますねえ。


「連合のおかげで正社員になれたんだから、組合に加入しなさい」


いま派遣で働いてる人間がみんな組合員になったら、
組織率はいきなり、すごい上がるでしょうね。
“下衆の勘繰り”というやつですが。


う〜ん、まあ分かりませんけどね。
自分は「会社員」だった経験が、1年弱しかないので。
「みんな正社員になりたがってる」というのを読んで、
「社員さんってな、そんなにエライのかよ」とムッとした自分が
アマノジャクなんでしょう、きっと。


9月14日付mixi日記に若干の変更を加えてあります)